このブログ記事は、どんな「情報モラル/リテラシー」啓発をしたい・聞きたい? Advent Calendar 2018の12月24日の記事です。
これまでずっと、いろんな形で情報セキュリティについての啓発や情報モラル教育についての啓発活動・教育活動を行ってきました。そもそも、ずっと主に高等教育機関にて文系の学生に情報処理という科目を教える仕事を15年もやってきたわけですから、昨年のカレンダーでも書いたようにそれなりに知識は蓄積があります。もちろん、日々更新していかないといけない分野ではありますけれども。
実は、今年になって、少し情報モラルにかかわる内容の講演依頼や報道機関からの取材依頼が急増しました。
大学での教育活動・学務活動・研究活動と並行する形で進めてますので日程が会わないなどでお断りすることもありますが、なるべくお受けしてお話をさせていただくようにしています。以前から学校で学生に対する教育の一環でお話をすることはあったのですが、最近の依頼の多くが、子どもたちをサポートする立場の教員(生徒指導の先生方)や、地域ボランティアなどに向けての研修の一環で話してほしいといわれることが多いのです。特に、SNSで子どもたちがどのような状況にあるのかを教えてほしい、(危ない使い方も含めて)なぜ子どもたちがそういう用い方をするのか教えてほしい、という依頼が急増しています。
確かに、学校などでの生徒指導の現場などに行くと、児童生徒に対する問題行動の大半が『SNSに基づくトラブル』になってきています。ある先生からお聞きした話では、4割に計上されるとのことで、それは確かに子どもたちを指導したりサポートする側の人たちからすれば「いったい何が起こっているのか」と思わざるを得ないというわけです。わからなくもない。
そういう場において、情報モラル教育の専門家の中には「子どもたちはXXXXXのような使い方をしていて危ない!危険だ!」と危険性をことさら強調される方もいらっしゃいます。確かに、スマートフォンもSNSも使い方を誤れば危険なものではあります。人間関係だってこじれますし、サイバー犯罪にも巻き込まれますから。でもそれは、スマートフォンやSNSに限ったことではないはずです。はさみだって、包丁だって、ろうそくに火をつけるチャッカマンだって、便利だけれども使い方を誤れば大変なことを引き起こす道具です。
私は情報セキュリティの専門家の端くれです。
ですから、情報セキュリティの分野ではまずリスクがどこにあるかを考えることから始めます。
スマートフォンやSNSについて、
・どのような設定で
・どのような用い方(運用) をしたら
・どのような危険性が
・どの程度起こりえるのか
・その結果何が最も危険なのか
…を子どもたちに私たちは適切に教えているのでしょうか?
危険性は教えているケースも多いですが、子どもたちに聞くとあるいは指導される側・サポートされる側に聞いてみても、
「…個人情報がでちゃう」
「…消せないらしい」
と、割とあいまいです。
例えば、
・どんな法律に抵触し、どのような罪に問われるのか
・その情報を削除するためにどれぐらいの費用が発生し得るのか
・その問題の対応にどの程度時間と労力が払われるのか
…等の具体的な問題点が明確にならなければ、子どもたちの心には届かないのではないかと考えています。
次に、これらの問題は「スマートフォンやSNSのトラブル」とひとくくりにまとめられてしまうことが多いのですが、講演に行くといつも多岐にわたる事例を取り扱うのでいろんな法律の話やトラブル解決手法の話をしなければならなくなります。
聞きに来ている方は、おそらく「スマートフォンやSNSのトラブルの解決法」という一つの解決法があると思い込んで、それについて教えてもらえると考えていらっしゃいます。(実際に、そういわれますw)
ですが、そんなもんはない!
残念ながら・・・ないんですよ。
トラブルの原因が本当に多岐にわたる。
例えばこんな感じ。実際のトラブルを左に、そのトラブルがもたらす問題点を右側に示しています。(図は花田が作成)

これ、とても「スマートフォンやSNSのトラブル解決法(唯一)」みたいな話じゃないじゃないですか。
しかもこの問題を一人で解決できるなんて人は、たぶんほぼいない。私も、この問題を全部持ち込まれても解決できないです。実際に、弁護士などに助力を頼まないと無理なケースもありますし。
ですから、やはりいろんな専門家が協力し合ってこの手の問題にサポートする仕組みが必要なのだろうと感じています。
でも、窓口は統一したい。なるべく窓口は一つにしておかないと厳しいだろうと。
これ、警察がその窓口になりつつあるなーと最近感じています。
事業者さんでも、自社のインフラサービスを活かしてその役を買ってくれている事業者もあります。
こういうの、もっと広がるといいなと。
必要な人に届けられるまでにはかなりの時間と労力がかかるのが啓発活動の宿命です。
ですが、それを手をこまねいていてはいけない状況に今我々はあるのだと思っています。
子どもたちが生きるサイバー環境が安全なものではない、安全な使い方を学べていない、安全な設定をするべき保護者・教育をするべき周辺の指導者や大人たちが、子どもたちを安全ではない環境に(未知がゆえに)置いてしまっているのは、とても由々しきことだと考えています。
情報モラル教育、という枠組みの中で取り組むにはとても膨大な課題ではありますが、一つ一つをこなしていくしかない…と考えつつ、次の講演依頼に向けて資料の精査をする日々です。
(おかげで仕事が溜まってましてw)
#おわび:24日に更新できなくてごめんなさい(ブログを書く作業をしてたら、わが家にもサンタさんが到着したようです…一瞬で見逃しましたがw)